「ツウになる!チーズの教本」発売

チーズプロフェッショナル協会監修のもと、チーズに関する本を執筆させていただきました。ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。

◎「ツウになる!チーズの教本」(出版社:秀和システム)

かなり長いのですが、本書にて書かせていただいた「はじめに」の文章を転載させていただきます。


はじめに

「あなたはチーズが好きですか?」

こう質問すると、たくさんの方が「好きです!」と答えてくれます。でも「どのチーズが好き?」と次の質問をすると、ほとんどの方が「え〜と・・・」と、言葉に詰まってしまいます。

「チーズ」という言葉を聞き「好きです!」と答えるまでに、頭の中でイメージするのは、どんなチーズでしょうか。チーズバーガーやピザ、グラタンやチーズフォンデュといった料理?もしくは、チーズタッカルビやのびるチーズドッグといった流行りのメニューでしょうか。

どれもおいしいけれど、まだまだそれはチーズの世界の入り口。

チーズの伝統国では、日常の食卓に欠かせないものとしてチーズが存在していますし、その種類は星の数ほどあります。真摯に、丁寧に造られるチーズには、ほかの郷土の料理やお酒と同じように、ワクワクするような魅力やストーリーがあります。

また「チーズを知る」ということは、その製造工程や原料となるミルクのことはもちろん、そのミルクを搾らせてくれる牛や山羊、羊などの動物のこと、その餌となる草や自然環境・・・いろいろなことがつながってきます。ひとかけらのチーズには、自然の恵みと長年積み重ねられてきた英知がギュッと詰まっているのです。

日本におけるチーズの食文化は、まだ始まったばかり。その歴史や造り手については、本書の中でも詳しくお伝えしますが、日本の一般家庭にチーズが普及したのは、戦後のこと。ヨーロッパには1000年単位の歴史があるのに対し、まだ100年も経っていません。でも、伝統や本質を大切に考え、新たな食やスタイルを生み出すことが得意な日本人。私たちならではのチーズの食文化がこれから花開いていくことは、想像に難くありません。

「チーズが好き!」から一歩進んで、「〇〇っていうチーズが好き!」「このチーズはこうして食べるのが好き!」「この人の造るチーズが好き!」といった答えが返ってくる“チーズツウ”が一人でも多く増えたら素敵だなぁ・・・そんなことを思い描きながら、本書を執筆しました。

本書は、日本の食卓、そして日本人のさまざまな生活シーンにチーズを定着させるために日々活動を行っているNPO法人チーズプロフェッショナル協会の監修のもと、同協会が手がける公式教本や「チーズ検定」の公式テキストブックの内容をベースに、チーズプロフェッショナルである著者が所有する独自の資料を加え、執筆・再編集した内容となっています。写真素材につきましては、日本各地の工房やチーズに関わるさまざまな団体の方々にもご協力いただき、新たなものも多く使用させていただいております。チーズを愛するみなさんのご協力に、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

そうした感謝の思いを胸に、改めてチーズと向き合うと、何だかそれだけで自然と笑顔になってしまいます。チーズが特別な食べ物としてではなく、多彩な食べ方とともに日々の暮らしに溶けこんでいきますように、そして、多くの方がチーズから広がる楽しみをたくさん発見してくれますように・・・やはりそう願わずにはいられません。

まずはページをめくりながら、ひとつでもよいので“自分のお気に入りのチーズ”を見つけてみましょう。そこからワクワクする何かが、きっと始まります。

ようこそ、チーズツウの世界へ!


2018年11月
佐野嘉彦

しなやかに、食べよう。

食を中心としたカルチャーやライフスタイルのプロジェクト。そこにはモノがあり、ヒトがいて、コトが生まれます。 佐野嘉彦が代表を務めるsembrar(センブラール)では、企画や取材執筆、編集、またイベントやセミナーの実施など、さまざまなコミュニケーションのサポートを担っています。